Re: "ちょっと配慮すればできる"と いうことに関して



On Mon, 16 Aug 2004 02:19:21 +0900,
戸嶋凡兵衛 <sonchou@xxxxxxxxxxxxx> wrote:
>今回のWebJISやWCAGなどの策定内容は私にとっては資料出しかなく、これだけ用
>意したのだから制作者が後は考えろと言っているように読めてしまいます。(私
>は捩れているのかもしれません。^_^;)
>私はこう言った類の規則のようなものを作る専門化でもなく、ごく普通の制作者
>で、利用者です。アクセシビリティの中に説明の必要なものには説明を加えるよ
>うに、と言ったくだりが存在していたと思います。WebJISの文章は本当にそのよ
>うに成っているのでしょうかっ!?ある程度は配慮がしてあるとは思いますが、
>完璧に出来ているとは思いませんし、そんなモノはこれからも存在するとも思っ
>ておりません。その都度、関わるもので修正し改正して行くものでしょうから、
>完成なんて在り得ないと思っております。でも、少しでも誰もが理解し、制作物
>に活用してこそ意味があるわけで、現状の在り様には納得していません。

確かに、とにかく説明をつけろっていう内容は随所に記載されていますが、
どんな説明をすればどのような人にわかってもらえるのかということが
網羅されているわけではないですね。

したがって、どうすれば何が実現できるということが具体的には
わからないでしょう。その状態で「ちょっと配慮すればできる」と
いわれても、制作者は困ると思います。

いえ、書かれているといえば、それはそうであることは理解しています。
たとえば「わかりやすい言葉を使いましょう」とかのたぐいですが。
ただ、地図の件でいえば、地図がわかりづらいという場合はまず地図自体を
改良することが考えられるのですが、地図を読むのが苦手な人に対しては
その道のりを示すテキストを添えなければならない。しかしそのテキストを
理解することが困難な場合は、テキスト自体を改良するか、しかし改良する
だけで足りるのか、といった按配です。

つまり、どこまで実装すべきなのかという基準がないと、終わりが
見えないですね。

これが、WCAG 1.0やJIS規格に記載されているような縛り(というか目安)
なくして単に「ちょっと配慮すればできる」っていうのは制作者泣かせ
でしょうよ、って僕が思う理由なのですが。

とりあえず、拠り所となるのであろう規格書であるとかに、
「わかりやすい言葉を使いましょう」と記載されているのであれば、
じっさいにわかりやすい言葉を使って、いちおうの説明文となりそうな
ものを添えることで、たとえばWCAG 1.0のLevel Aが確保できるものと
見なすというようにしていかないと、制作者はひたすら困るしかない
というか、さあ困ったという局面に対しては、そもそも地図のコンテンツ
自体をなくすという選択もありえてくるでしょう。

たとえどんなにわかりづらいものであっても、地図があるというだけで、
無いよりはアクセシビリティが高いということをも見失ってしまう
かもしれないのです。

WCAG 1.0なんかは、じっさい内容的に緩いですから、あとは自分で考えろ
という色合いが濃いですね。
でもまあ、僕はそれはそれで良いのじゃないかと思いますけど。
ガイドラインに基づいて、じっさいにどのように実装したことにより
どうアクセシビリティが向上したかってコトを、自身のノウハウや
ナレッジとして蓄積、あるいは公開して情報を共有するという、
そのような積み重ねがすべてでしょう。


>障碍者射撃協会の練習場への地図を作るのに同じような試行錯誤をした事を思い
>出します。車椅子が通れる道順に写真を撮り、撮影位置の360度の写真もつけて
>作りましたが、現在存在しませんので公開出来ないのが残念です。
>視覚障碍の方への案内は点字ブロックと音の鳴る信号機を基準にルートを作りま
>した。エレベーターやエスカレーターなどの記載も忘れていません。
>でも、結構遠回りに成る事が多いんですよねっ!

なるほど。やはり写真の掲載は良さそうですね。そのページが存在して
いないということは、僕も残念に思います。

僕が弊社の地図ページを改良するのは、いわゆる健常者向けに、より
アクセシビリティを高めようという方向性でもありますので、たとえば
360度の写真をどう載せるかという辺りなどは見せ方が面白そうです。
コンテンツが地図であり、ゴールは到達経路をどう見せるかという点で
あるのであれば、表現はいろいろ考えられますし。



>バリアフリーはユーザビリティと現状では繋がらない事が多いです。
>本当にユニバーサルなデザインが理解され、成され、みんなの望まれる世界が作
>られる時まで私は生きているんですかねっ!?
>多分無理な気がしますが、努力だけはして行きたいですねっ!

ちょっとわかりづらいのでお訊きしますが、ここでおっしゃっている
「バリアフリー」「ユーザビリティ」「ユニバーサルデザイン」とは、
それぞれどういう意味合いでしょうか。

地図の掲載だけにとどまらず、その行程が視覚的に把握できるよう
写真を掲載したりとかいうのはアクセシビリティの向上に繋がる
でしょうね。そしてそのコンテンツへ自然に到達できるよう、ウェブ
サイトを設計・実装することがユーザビリティの確保となるでしょう。
また、点字ブロックや音の鳴る信号機の存在はバリアフリーのための
ものということかと思います。ユニバーサルデザインっていうのは
またちょっと違うでしょうね。たとえば信号機でいえば、歩行者用の
ボタンが大人の腰かそれより低い位置についているとしたら、それが
ユニバーサルデザインの一環といえるとか、そういうものでしょう。

「アクセシビリティ」「バリアフリー」「ユニバーサルデザイン」
これらの言葉はいっしょくたに使われてしまいがちですが、それぞれの
設計・実装は違いますし、それらによって提供される結果も違ってくる
と思います。
いずれも「使いやすいものとなるように」という根底的な考え方の
部分では同じでしょうが。その観点では、「ユーザビリティ」といえば
それはもっと広義的というかそれらをすべて包含するような意味合いが
あるのではないかとも思います。


-- 
yuu Morita
http://w3j.org/