「x8341-3 基本的要件 4.2 .-d 身体の安全」の不満



茨城県教育庁 総務課 教育情報化推進担当 鈴木啓之です。

知的障害について言及する前に、別スレッドで「障害者の安全」も
投げてみます。(どのみち、グループウェアの仕様でスレッドを
切ってしまうのですが m(_ _)m      )

X8341-3 基本的要件 4.2.-dで身体の安全をうたっているのに
それと関連するのは、5.7音、5.8速度しかないのも
不満が残ります。(上位規格X8341-1も同じ理由で大いに不満がある)
障害児(者)が、その障害ゆえに起こりうる安全上のリスクについて
なんら言及されてないのです。

例えば、総務省委託調査「コンテンツの生体への影響に関する
調査・研究」報告書16.3を見ると、
「VR酔い」が大きく取り上げられています。
教育現場では、ビデオ教材によるVR酔い事故が毎年何件か発生しています。
知的障害児の場合、全般的に感覚統合の発達の遅れを示す児が多く
感覚混乱刺激(動画、アニメーション、背景の運動、ステレオ音源での音源移動)
への言及が欲しいところです。
(特にマクロメディアなどが普及して、動くコンテンツやオブジェクトが
増えている現状では、今のうちに言及すべきと思います)

ついで、「立体視疲労」についても、言及がされていません。
視力が低下するに従って、立体視が困難になってきますが、
(画面上での仮想的な)立体視が強要されると健常児(者)でも
多様な身体症状を呈することがあります(疲れ目、目が重い、二重に見える、
目が乾く、頭が重い、頭が痛い、肩こり、肩が痛い、背中が痛い、吐き気、めまい)。
加齢など軽い視力障害のある場合の、「立体視疲労」のハイリスクを
言及すべきです。
近年は、Webページを開いただけでマクロメディアのアニメーションが
動き出すサイトも増えています。「立体視表現であることの表示」や
「代替手段」の設定、「自動的に実行されないこと」を明記すべきと考えます。

また、寝たきりの肢体不自由者や長期療養者が、たまに体を起こしてもらって
コンピュータにアクセスしていると、起立性自律失調症の危険があります。
(めまいだけでなく、失神や血圧異常低下など、重篤な場合もあります)
肢体不自由児によっては、同じ姿勢をとり続けられない児もいます。
また、注意障害や情緒障害児の中には、長時間の集中や集中の持続が
困難な場合もあります。
また、病弱・虚弱児にも、長時間の作業ができなかったり、医者に
視聴時間を制限されている場合があります。
近年は、動画や音声、アニメーションの組込みや、最初から視聴してゆかないと
たどり着けないWebページが増えています。ぜひとも、「5.3 操作および入力」に
「利用者が、任意の時点で視聴やWebの閲覧を中断することができ、任意の時間の
経過後に、中断箇所もしくは任意の時点から視聴を再開することができる」
等の趣旨を加えていただきたいと考えます。

また、「5.3 操作および入力」でさらに安全に関して不満があります。
Webページ閲覧者は、フォームやリンクに対してのみ操作をするわけではありません。
横長や縦長にデザインされたページで、画面に表示しきらない場合は、ブラウザが
スライダバーなどを表示し、閲覧者/利活用者は、画面のロールのために、
入力デバイスを介して操作する作業が発生します。
この、閲覧にかかる操作への言及が落ちております。
(他のページへのリンクボタンがページTOPにしかなければ、こんどは
巻き上げ操作も必要となります)

ぜひとも「操作および閲覧に要する利用者の操作を最小限にする」
という1項目が入るべきと考えます。
脳性麻痺児(者)の方など、操作をするのに痙縮をおして入力デバイス
を操作している場合など(不随意に動いてぶつかる部分が)傷だらけ、
手の皮がずる向けなど難儀しているケースがあります。

同様に、閲覧者が予見できない表示画面輝度の急激な増加や持続は、
受光量調節能力に制約のある視覚障害者の安全確保上問題があります。

同じく、閲覧者が予見できない中音域音圧の急激な増加や持続は、
補聴器利用者の安全確保上問題があります。
特に学校や公共施設の端末など、ハードやOSのラウドネス設定が
どのよになっているか閲覧者に不明確な環境では、危険が増大します。



== 補 =========================
光感受性発作は、敏感期は思春期の一時期に限られ、しかも
障害/健常者とも発症のリスクはあります。
自発発作のある児(者)では(知的障害/重複障害児には、自発発作のある児の割合が高いものの)。
一般的なユーザビリティの基準ではなく、高齢者・障害者を対象とした
アクセシビリティ標準でわざわざ「禁止事項」として触れることは
念が入っていていいなとは思いますが、障害児(者)に特徴的な障害に
起因する安全上のリスクとその対策に触れていないことには不満が残ります。

刺激誘発性の感覚統合失調(乗り物酔い、VR酔いなど)は、視覚、体性覚、平衡覚などの
入力に相互に矛盾があると発症する病気です。
知的障害児(者)だけでなく、高齢者は筋力が落ちていることもあり、
感覚混乱によるめまい発作や転倒などの事故も懸念されます。
(高齢者は、メニエール症候群の発症/徴候比率も高いのでなおさらです。)
また、健常者でもアフターエフェクトが半日程度続き、女子では遅延徴候の方か
顕著であるなど、リスクが大きいといえます。
茨城県教育庁 総務課
教育情報化推進担当
鈴木 啓之(ひろゆき)
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