JISを考える上で



梅垣です。

始めましてのみなさまもどうぞよろしくお願いします。活発な議論がお
こなわれていて、非常にうれしく思います。そこで、今回のJISをより
よいものにするために、議論していただくうえでの「視点」を提示した
いと思います。

1. ユーザエージェントとコンテンツの役割分担という視点

本来ユーザエージェントがアクセシビリティ機能として備えるべき課題
と、コンテンツが普遍的に対応すべきアクセシビリティとは区別して考
える必要があります。たとえば、今ある支援技術の技術的な未熟さをコ
ンテンツ側ですべて解決せよというのはいささか一方的に過ぎるのでは
ないかと思いませんか?もちろん、今現在の使いにくさを解決すること
はJISの大事な役割ではありますが、コンテンツのアクセシビリティが
本来どうあるべきかという姿から大きく逸脱するのはあまりいいことで
はないように思います。

2. JISはそう簡単には改定できないかもしれないという視点

JISは今ある問題を解決しようとしていますが、将来発生する問題を事
前に標準化し規定することによって防ぐという使命もあります。したが
って、将来(数年先)のアクセシビリティ技術、インターネット技術がど
う進化するかを見据えて作成する必要があるということです。改定まで
は、実用に耐えるものを作らねばなりません。

3. 日本文化、日本語固有の問題はあるのかないのかという視点

すでに問題提起されていますが、日本固有のアクセシビリティに関する
課題が何かという点は重要です。それは、W3Cの仕様、とりわけWAIの
WCAGには依然として含まれていない可能性があるからです。それが何で
あるかを明確にすることは、国際的にも大きな意義がある仕事です。そ
の点で、WAIもJISの仕事に注目しています。

4. 守って欲しいレヴェルを考えるという視点

JISを守る上でコンテンツを作る人、企業、国には何が重要なのかを伝
える必要があります。多くの企業はコストがかかることを理由に、アク
セシブルなWebを作る事をさぼっています。私は、最低限守るべきこと
が何かを示すことによって「守ることができると思えるもの」を示すこ
とが得策であると考えています。100の項目を100のコストで実施すると
100%のアクセシビリティが確保できるとしたときに、10の項目を10のコ
ストで実施したときに95%達成できるとしたら、いきなり100%を目指し
て拒否されるより、まず95%を目指すという考え方が可能です。もちろ
ん、これはまったくの机上の論理でしかありませんが、JISは任意の規
格であり強制力がありません。このJISを有効にするためには実際に守
ることが可能だと思わせること、社会的にJISを守れとという声を大き
くしていくこと、という2つのことが大事だと思っています。JISはゴー
ルではありません。むしろ、やっとスタート地点にたったところである
と考えられます。

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ここのメンバーの方々には、技術的にも実践的にもプロといえるかたが
たがたくさんいらっしゃると思います。ぜひとも、建設的で具体的な意
見を多数寄せていただいて、JISをよりよいものにしていただければと
思います。

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梅垣まさひろ ume@xxxxxxxxxxxx
http://www.st.rim.or.jp/~ume/