Re: JISを考える上で
- To: web@xxxxxxxxxxxxxxxxx
- Subject: Re: JISを考える上で
- From: Eiichi ITO <ito@xxxxxxxxxxxx>
- Date: Sat, 8 Nov 2003 22:46:27 +0900
伊藤@長野大学 です。多くの方々から伊藤はいつまで黙っているのかと、
お叱りを受けるのではないかと思っておりました。
さて、梅垣さんから以下のような方向性を提示して頂き、ようやく話題に
ついていけるようになったように思えました。
私はこれまで肢体不自由者関連の技術支援を中心に仕事をして来たため、
どちらかというとコンテンツよりも利用者が直接操作をする環境、つまり
ブラウザやOS、インタフェース装置という側面での問題点を強く感じて
きました。そのため、梅垣さんが第1に挙げておられた役割分担という
視点には共感いたします。
ただ、情報提供者側が配慮するべき点、つまりコンテンツで対応するべき
問題と、ユーザー側のブラウザやOS、音声読み上げ環境なども含めた
インタフェース(代替入出力装置など)で対応するべき問題の境界が
あまり議論されておらず、明確にはなっていないと思います。
しかし、境界は技術の進歩によっては「ゆらぎ」があり得る訳で、はっきり
位置付けることの弊害もあると考えられます。そのため、現段階では
はっきりしている部分、つまりコンテンツとインタフェースでの役割分担を
なんらかの形で明示できないかと思います。
つまり、JIS原案にある項目のうち、確実にコンテンツ側で対応するべき
ポイントと、ユーザーインタフェース側で対応するべきポイントを明示
できないかと思います。
また、今後コンテンツ側と、ブラウザを含むインタフェース側の技術開発が
連携をとれるような仕組みも、なんらかの形でJISに盛り込めないのかなぁと
素人的には感じました。つまり、それぞれの側が調整や同期無しに技術開発を
進めてしまうことは、できれば避けたいと考えております。
特に、特殊な入力装置などのような利用者が僅かな支援技術を考えると、
OSの進歩や入力インタフェース接続環境の変化に追い付いて行く事ができず、
多くの重度障害者向けのインタフェース装置が、それを必要としている
利用者がいるにも関わらず途中で製造中止となっている現実があります。
コンテンツが中心となっている今回のJISには盛り込めないというのであれば
インターネットを利用するために必要な条件として、コンテンツのみならず、
ブラウザやOS、代替入出力装置などの相互的な役割分担の上に成り立っている
という状態を説明して頂き、コンテンツだけでアクセシビリティが確保できる
訳では無く、もちろんインタフェースやOS側の対応だけで解決できるものでも
ないという思想を明確にしなければならないのではないかと思います。
十分に原案を読み込んでいないため、誤った解釈をしたかもしれません。
お許しください。
At 9:44 PM +0900 03.11.8, UMEGAKI Masahiro wrote:
>梅垣です。
>
>始めましてのみなさまもどうぞよろしくお願いします。活発な議論がお
>こなわれていて、非常にうれしく思います。そこで、今回のJISをより
>よいものにするために、議論していただくうえでの「視点」を提示した
>いと思います。
>
>1. ユーザエージェントとコンテンツの役割分担という視点
>
>本来ユーザエージェントがアクセシビリティ機能として備えるべき課題
>と、コンテンツが普遍的に対応すべきアクセシビリティとは区別して考
>える必要があります。たとえば、今ある支援技術の技術的な未熟さをコ
>ンテンツ側ですべて解決せよというのはいささか一方的に過ぎるのでは
>ないかと思いませんか?もちろん、今現在の使いにくさを解決すること
>はJISの大事な役割ではありますが、コンテンツのアクセシビリティが
>本来どうあるべきかという姿から大きく逸脱するのはあまりいいことで
>はないように思います。
>
>2. JISはそう簡単には改定できないかもしれないという視点
>
>JISは今ある問題を解決しようとしていますが、将来発生する問題を事
>前に標準化し規定することによって防ぐという使命もあります。したが
>って、将来(数年先)のアクセシビリティ技術、インターネット技術がど
>う進化するかを見据えて作成する必要があるということです。改定まで
>は、実用に耐えるものを作らねばなりません。
>
>3. 日本文化、日本語固有の問題はあるのかないのかという視点
>
>すでに問題提起されていますが、日本固有のアクセシビリティに関する
>課題が何かという点は重要です。それは、W3Cの仕様、とりわけWAIの
>WCAGには依然として含まれていない可能性があるからです。それが何で
>あるかを明確にすることは、国際的にも大きな意義がある仕事です。そ
>の点で、WAIもJISの仕事に注目しています。
>
>4. 守って欲しいレヴェルを考えるという視点
>
>JISを守る上でコンテンツを作る人、企業、国には何が重要なのかを伝
>える必要があります。多くの企業はコストがかかることを理由に、アク
>セシブルなWebを作る事をさぼっています。私は、最低限守るべきこと
>が何かを示すことによって「守ることができると思えるもの」を示すこ
>とが得策であると考えています。100の項目を100のコストで実施すると
>100%のアクセシビリティが確保できるとしたときに、10の項目を10のコ
>ストで実施したときに95%達成できるとしたら、いきなり100%を目指し
>て拒否されるより、まず95%を目指すという考え方が可能です。もちろ
>ん、これはまったくの机上の論理でしかありませんが、JISは任意の規
>格であり強制力がありません。このJISを有効にするためには実際に守
>ることが可能だと思わせること、社会的にJISを守れとという声を大き
>くしていくこと、という2つのことが大事だと思っています。JISはゴー
>ルではありません。むしろ、やっとスタート地点にたったところである
>と考えられます。
>
>--
>
>ここのメンバーの方々には、技術的にも実践的にもプロといえるかたが
>たがたくさんいらっしゃると思います。ぜひとも、建設的で具体的な意
>見を多数寄せていただいて、JISをよりよいものにしていただければと
>思います。
>
>-----
>梅垣まさひろ ume@xxxxxxxxxxxx
>http://www.st.rim.or.jp/~ume/
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Eiichi ITO
ito@xxxxxxxxxxxx
Nagano University
www.nagano.ac.jp
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