Re: 製品開発について



マイクロソフト金子です

池田さんの発言はいつも非常に参考にさせていただいております。特に、今回の池田
さんの発言には多くの核心があると思います。個人的には池田さんが指摘したような
方向性にNAPの可能性を期待しているのですが、皆さんはいかがでしょうか?

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> アクセシビリティ製品に関しても、これははるか以前から言われ続けて来た
> ことなんですが、現実にはそれほど盛んには行われて来ませんでした。
> また、考慮しなければならない点は、設計・開発段階で障害者を入れてレビューし
て
> 来た製品でも市場に受け入れられたと言う事例が極めて少ないと言うことです。
> 
> ようするに、障害者も入れて検討しましたと言うプロジェクトでも
> その障害者が客観的にものを見て評価できるか、あるいは
> 主観的な意見でものを言うかによって製品の質や方向性は大きく変わってしまいま
す。
> 参加してもらう障害者の人選が問題です。
> 私の経験では、障害者の世界において、広い知識と客観的な視点をもって製品の
> 評価に当たれるような人材はそれほど多くないように思えます。

まさにこの点は特に日本で米国や北欧との差を広げているポイントかもしれません。
そして、そのあとに池田さんがご指摘されるように適切な解析パターンを設定するこ
とは簡単ではありませんが重要ですね。また、サンプリングにおいて適切なポイント
を落とさずに把握するというのは、案外ユーザーの直接の声や反響からは難しい場合
が多くあります。ユーザーの意見を反映したつもりが実際には気に入られなかったと
いうのは非常に残念なことですが、それ以上に無駄なコストの痛手がメーカー側には
痛く残ります。

別にアクセシビリティに固定する必要もなく、成功する製品というのはただ闇雲に多
くのサンプリングをした製品というよりは必要なポイントをしっかりと押さえたもの
と言い換えることができると思います。そして、特に重要なポイントというのが共有
されることが望ましいのがアクセシビリティの分野ではないかと考えています。


> それと、もう一つ、一般の開発者は「障害者の利用」と言うことになると
> ナーバスになりすぎるのではないかとも感じています。

これは私もできたら強調したいポイントです。人間の使うものですから、その使いや
すさの定規はまったく形の違うものではないと思っています。最低限必要な機能とい
うのものは実際には通常使ってみて痒いところに手が届くという機能に行き着くこと
が多いのも事実です。

> これからのアクセシビリティは、どんなものを作ればよいのかと言うことだけでな
く、
> それをどのように流通させるか、誰がどのようにサポートしていくか、
> いかにして提供し続けるか、いかにして改良していくかといったことも
> 含めて考えていかなければならないのではないかと感じています。

流通、サポートをまじめに考えて、しかも継続性を維持するというのは容易ではあり
ません。企業としても決して純粋なボランタリーで参加できるようなものではなく、
ある意味成熟した市場として認知される程度のものが保証されなければその場限りの
技術で終わってしまうものがあとを絶たないのではないでしょうか?

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追伸、NAPでは企業や団体の枠を超えたディスカッションをすることがひとつの目標
ではないかと思います。私はマイクロソフトの一員としてコメントしているのではな
く、日本でアクセシビリティの開発に従事するものの一員としてコメントさせていた
だいているつもりです。

よろしくお願いいたします。

マイクロソフト株式会社
研究開発本部 ウィンドウズOS部 一課
Accessibility Program Manager
金子雅彦 <mkaneko@xxxxxxxxxxxxx>
TEL 0424 40 5388 (direct)  FAX 0424 40 5042