RE: 【WCAG2.0】音声ガイ ドはレベル1?



インフォアクシア 植木様

NTTクラルティの小高です。
さっそくのご返信、また、ワーキンググループでの議論のご紹介
ありがとうございます。

私も全盲ですので、テレビや映画をはじめとした映像メディアに
もっともっと多くの音声ガイドが付けられないのか、
これは常々思っていることです。

> ・視覚障害などで画面を見ることのできない人にとって、
>  動画の画面だけでしか伝えられていない情報は、
>  情報として存在しないのに等しい。
>  (つまり、代替テキストのない画像と同じ考え方です。)

ただ、「代替テキストのない画像」とは、若干違うのではないかとも感じています。
「代替テキストのない画像」は、情報がまったく存在しない、ゼロの状態です。
それに対して、音声ガイドがない映像であっても、セリフをはじめとした
音による情報が、たくさん存在するのです。

電車の音がすれば、そこは駅だなと推測できますし、
声や口調で、怒っているのか笑っているのかも推測できるわけです。
実際、多くの視覚障害者が、ラジオでなくテレビを楽しんでいるように、
音声ガイドがなくても、まったくゼロの情報とはいえないわけです。

しかし、音声ガイドの制作には、コストと時間がかかるのは紛れもない事実です。
また、ベースラインの設定によって、音声ガイドでなく「代替コンテンツ」を
提供すれば足りるとなっていますが、この「代替コンテンツ」の提供も
決して容易ではありません。
例として、「脚本」があげられていますが、膨大な情報をすべて含む「脚本」が
「代替コンテンツ」となり得るのかも、やや微妙です。

そうなってくるとやはり、レベル1という高い壁を、初めから設定することにより、
その壁を越えることを最初からあきらめてしまう、
つまり、その映像コンテンツが、「適合宣言の範囲」外に置かれてしまうのでは
と危惧してしまうわけです。


と、ここまで書いてみたのですが、
実はこれも、取り越し苦労かもしれませんね。
レベル1に規定されることで、一気に音声ガイドが普及するかもしれませんし、
もう少し、意見を整理してみたいと思います。

また、いろいろお伺いするかもしれませんが、
よろしくお願いいたします。


Makoto UEKI  - Infoaxia, Inc. - wrote:
> NTTクラルティ 小高さん
> 
> インフォアクシアの植木です、こんにちは。
> 
> たしかに、米国では、ヘッドホンで音声ガイドが聞けたり、
> アクリル板を装着することでキャプションが見れる映画館が
> 増えてますよね。
> 
> 参考までに、ワーキンググループでの議論をご紹介しておくと、
> この音声ガイドやキャプションについては、いろいろ議論が
> なされました。
> 
> 現状では、音声ガイドやキャプションを付けるには、時間も
> コストもかかるし、それに必要なスキルを身に付けるのも
> 大変だという意見も当然出ました。私も同様の意見を出した
> のですが、最終的には以下の2点から達成基準1として位置づけ
> られました。
> 
> ・視覚障害などで画面を見ることのできない人にとって、
>  動画の画面だけでしか伝えられていない情報は、
>  情報として存在しないのに等しい。
>  (つまり、代替テキストのない画像と同じ考え方です。)
> ・WCAG 1.0で優先度1としていたので、そのレベルを下げる
>  ことはガイドラインとして退化したことになる。
> 
> 後者はともかく、前者については誰も異論はなく、実際の
> 現場の状況よりも、その重要性が優先された格好です。
> つまり、これはこの達成基準に限ったことではありませんが、
> その難易度に国や言語により差異はあれ、たとえ現状では
> 困難でも時間が経過して技術が進歩すれば、より手軽に実現
> できるツールなども出てくるだろう、という考え方です。
> もちろん、それによって誰もWCAG 2.0を守ろうとしなくなる、
> という可能性も同時にあるわけですが。
> 
> ただ、ここでベースラインという考え方が関係してきます。
> ベースラインに関する解説文書の事例に出てくるように、
> マルチメディア技術をベースラインに含まない場合は、
> 音声ガイドやキャプションは必須ではなくなります。その
> 代わりに、何らかの形で代替コンテンツを提供することが
> 必須となります。
> 
> 逆に、ベースラインにマルチメディア技術を含める場合は、
> その技術で提供している情報がアクセシブルである必要が
> 出てくるので、音声ガイドやキャプションが必須になる
> わけです。その代わり、別のHTML版などの代替コンテンツは
> 不要となります。
> 
> http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/data/2006/WCAG20LC/WCAG20-ja/baseline/Overview.html#what
> 
> とはいえ、小高さんはもちろん、同様のご意見をお持ちの方が
> いらっしゃれば、是非ともそのご意見をワーキンググループに
> 提出していただけたらと思います。
> 
> 研究会でも議論になったベースラインについては、上記URLに
> ある翻訳文書も参考にしていただきつつ、一人でも多くの方に
> ご意見をパブリックコメントとしてご提出いただけたらと
> 思います。
> 
> 以上、ご参考になれば幸いです。
> 
> 
> On Sun, 21 May 2006 04:30:14 +0900
> KODAKA  <koda@xxxxxxxxxxxxxxxx> wrote:
> 
>> 小高@NTTクラルティです。
>> 
>> パブコメの締切間近ですが、皆様のご意見をお伺いしたく、
>> メールさせていただきました。よろしくお願いします。
>> 
>> WCAG2.0ラストコール・ワーキングドラフト、ガイドライン1.2では、
>> 音声ガイドとキャプションの規定が定められています。
>> 特に音声ガイドについて、その普及の度合は国によって様々であり、
>> 言葉自体も浸透していない、わが国の状況を鑑みると、
>> レベル1から定めてしまっていいのか、やや疑問を持っているのですが、
>> 皆様は、どのようにお考えでしょうか。
>> 
>> アメリカでは、音声ガイドを聞くためのヘッドホン設備を備えた映画館が
>> 100館にも及ぶといわれ、話題の映画に当然のごとく音声ガイドが付けられています。
>> また、音声ガイド付きのビデオやDVDも、市場に多く出回っている等、
>> Understandingにも登場しているWGBHを中心に、広く普及しています。
>> 
>> これに対し、日本では、NHKの朝の連続テレビ小説をはじめ、テレビでは数番組、
>> 複数のボランティア団体や視覚障害者福祉施設が、自主上映会や市民映画祭等で、
>> 音声ガイドを提供してきていますが、国内の劇場映画では、
>> まだほとんど普及していないというのが実情です。
>> 
>> 私も、シティライツというボランティア団体で、映画に音声ガイドを付ける活動を
>> 続けてきましたが、音声ガイドの制作や普及、著作権等の問題を解決するには
>> 一任意団体では限界があり、今般NPO法人を立ち上げました。
>> (先般認証され、来月の事業開始を目指し、現在準備をしております。
>>  HPが完成しましたら、またご案内させていただきます。)
>> 
>> その立場からも、音声ガイドを付与することがガイドラインに盛り込まれ、
>> Web内の映像コンテンツに、音声ガイドが付けられることは、
>> 大変望ましいことです。
>> しかし、音声ガイドとはどのようなものなのか、どのように制作すればいいのか、
>> 広く普及していない現在の段階では、レベル1として規定されることにより、
>> そのWebユニットから、あえて映像コンテンツがはずされてしまうのでは、
>> むしろ、音声ガイドの普及が妨げられてしまうのでは、と危惧しています。
>> 
>> 光の加入世帯も増加の一途をたどり、これからWeb内にも
>> ますます映像コンテンツが増えてくると予想されます。
>> 音声ガイドは、レベル2から規定し、レベルAA適合を目指した次なる目標とした方が、
>> その普及に寄与し、映像コンテンツの一層のアクセシビリティ向上に
>> つながるのではないかと考えますが、いかがでしょう。
>> 
>> 
>> # これまで、「副音声」「音声解説」「状況説明」と、様々な表記がされていたのを、
>>  「音声ガイド」と統一しようではないかと、話し合っていたところなのですが、
>>  今回の翻訳にあたり、「音声ガイド」という表現をお使いいただき、
>>  ありがとうございました。
>> 
>> 
>> ----------------------------------------
>>     小高  公聡   (Tomoaki  KODAKA)
>>     E-mail:  koda@xxxxxxxxxxxxxxxx
> 
> <以下、署名>
> -- 
> 株式会社インフォアクシア 
> 植木 真 <ueki@xxxxxxxxxxxxxx>
> 
> TEL:0422-76-8515   FAX:0422-76-8516
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