FYI: Web Content Accessibility Guidelines 1.0



中根です。

 アメリカ時間 5月5日、 W3C は Web Content Accessibility Guidelines
1.0 を W3C Recommendation として公開しました。 W3C Recommendation とは、
W3Cで開発が行われている仕様の最終的なステータスです。以下に報道関係者
向けに配布した資料の主文の翻訳版を添付しますので、参考にしてください。
なお英語版の方には、より具体的な情報なども含まれていますので、こちらも
ご覧いただければと思います。

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                                   World Wide Web Consortium, 中根雅文
[E-MAIL] : max@xxxxxx / max@xxxxxxxxxx
         Web Content Accessibility Guidelinesの公開について (W3C勧告)

  WAIによる障害を持つ人々のWebアクセスのための最も信頼のおける指針の提供


   http://www.w3.org/ -- 1999年5月5日 -- World Wide Web Consortium (W3C)は、
   本日“Web Content Accessibility Guidelines 1.0”をW3C勧告として公開い
   たしました。 W3C勧告であるということは、 本仕様が安定しており、 Webの
   普遍性の実現に貢献し、 W3C会員組織による検討の結果、 Webサイトをアクセ
   スしやすいものにするための方法として利用が推奨されるものであることを意
   味しています。 W3Cは、 情報提供者達が本仕様を用いることによって、 提供
   する情報のアクセシビリティの向上を図ることを奨励します。

 Webサイトに対する明確な期待値の提供

   「Web Content Accessibility Guidelines には、 Webのアクセシビリティを向
   上させるためにするべきことが解説されています。 アクセシビリティの高い
   Webサイトを構築する際、 どの変更が重要なのかということを理解することが
   これまで常に大変困難でした。 このガイドラインではこの点が明確にされてお
   り、 またアクセシビリティの高いWebサイト実現のために一般的に期待される
   事項が示されていますので、 Webサイトの管理者やユーザは、 より重要な事柄
   に注力することができます。 達成すべき目標は設定され、 その目標は技術的
   にはそれほど実現の難しいものではありません。 このガイドラインで示されて
   いるいくつかの項目については、 オーサリングツールが自動的に行うことがで
   きるようになれば必要のないものになるでしょう。 これからは、 どのWebサイ
   トがこのガイドラインを実践しているか を見ていく必要があります。」
   (W3C Director、 Tim Berners-Lee談)

 変化するテクノロジーに対応した確固たる指針

   Web Content Accessibility Guidelines は、 音声情報の形で提供されるもの
   と視覚的な形で提供される情報とが同等の内容となることを推奨するなど、 ア
   クセシビリティの高いWebデザインのために必要な確立された原則を定義してい
   ます。 ガイドライン中の各項目には、 その項目が示す原則が具体的にはどの
   ようにWebサイト作成で用いられる機能に適用されるのかを示す「チェックポイ
   ント」が提供されています。 例えば画像に代替テキストを付加することで、
   画像を見ることができない人でも情報を得ることができます。 音声ファイルに
   キャプションをつければ、 音声が聞こえない人でも情報を得ることができるの
   です。

   ガイドラインは進歩し続けるWeb関連技術の変化に対応できるような構成になっ
   ていますが、 同時に古いブラウザを用いているような場合に発生する問題に対
   応することもできるように作成されています。 各チェックポイントを、 HTML
   やCSS (Cascading Style Sheets)、 SMIL (Synchronized Multimedia
   Integration Language)などの最新のマークアップ言語やプレゼンテーション言
   語の仕様を用いて実現するための具体的な方法は、 同時に提供され、定期的に
   更新される「テクニック集」に解説されています。

 容易な参照のための重要度順のチェックリスト

   「ガイドラインとともに提供されている『チェックリスト』は容易にWebサイト
   のアクセシビリティの確認ができるようになっており、 ガイドライン中の3段
   階の重要度について、 わかりやすく概説しています。」
   (Web Accessibility InitiativeのTechnical Manager、 Daniel Dardailler談)

 確固たる協調作業の成果

   WAIにおける他の活動同様、 このガイドラインは産業界・障害者団体・アクセ
   シビリティ関連の研究組織・政府機関が協調し、 障害者のWeb利用における障
   壁を取り除くための方法について検討した結果策定されたものです。

   「W3Cは、 これまでにない形で産業・研究・実践の各分野の専門家を集める場
   を提供してくれました。 このような協調は、これまではある意味で不可能なこ
   とでした。 その結果、これまでになく包括的で、技術的にもしっかりとした、
   そして実用的なガイドラインを策定することができました。 さらに、このガイ
   ドラインの策定にあたっては、 この分野で活発に活動しているほとんど全ての
   人が参加しています。 したがって、このガイドラインは、 この分野において
   初めて参考文書として参照することのできる、 最も権威あるガイドラインとな
   りました。」
   (University of Wisconsin - MadisonのTrace Research and Development
   CenterのDirectorで、 Web Content Accessibility Guidelinesワーキンググ
   ループのco-chair、 Gregg Vanderheiden談)

 幅広い恩恵

   機器に依存しない形での情報提供の推進などに見られるように、 アクセシビリ
   ティを考慮したWebデザインは、 他のWeb利用者にも有益なものです。 視覚障
   害者のWebへのアクセスを支援するためのチェックポイントは、 携帯電話や携
   帯端末、 車載用PCなどからのWebの利用や、 回線速度が遅く画像や動画の閲覧
   が困難な場合、 あるいは他の作業に視覚を奪われている場合などにも有効です。
   また、音声情報への字幕の付加に関するチェックポイントは、 聴覚に障害を
   持つ人々だけでなく、 Webを騒音の多い場所、 または静かな場所で利用しな
   ければならない場合にも有効です。 また、これにより音声情報のインデックス
   付けや検索が可能となります。 プレゼンテーションのコントロールのために
   CSSを利用することは、 アクセシビリティの向上だけでなくページをダウンロ
   ードする時間の短縮やページの「見た目」の保守や更新の労力の軽減にもつな
   がります。

 アクセシビリティ向上支援のためのリソース

   「WAIでは、 アクセシビリティの高いWebデザインを支援するための多くのリソ
   ースを提供しています。 Webページの作者がガイドラインについて学ぶための
   オンラインの教材の開発も進めています。 この教材には、テーブルやフレーム、
   動画やマルチメディアなどのマークアップの例が含まれています。 これらの
   機能は、 適切にマークアップされていれば障害者にも利用可能なものですが、
   下手にマークアップされている場合には大きな障壁となってしまいます。
   この他にも、技術的な情報をまとめた文書、 アクセシビリティ向上に関連した
   機能を備えたブラウザに関する情報へのリンク、 アクセシビリティに関連のあ
   る各国の政策に関する情報へのリンクなども提供しています。」
   (WAIのドメインリーダー、 Judy Brewer談)

 Web Accessibility Initiativeについて

   W3CのWeb Accessibility Initiative (WAI) は、世界各国の組織と協調し、次
   に挙げる主な五分野の活動を通じて、 Webのアクセシビリティの向上を図って
   います。 1) Webの核となる技術が、 アクセシビリティに考慮したものとなる
   ようにするための活動。 2) Webページ作成やユーザエージェント、 オーサリ
   ングツールに関するガイドラインの策定。 3) Webページの評価、 およびWebペ
   ージのアクセシビリティ向上のためのツー ルの開発。 4) Webのアクセシビリ
   ティに関する教育・啓蒙活動。 5) 将来的にWebのアクセシビリティに影響を与
   える可能性がある技術の研究・開発状況についての情報収集。 Web
   Accessibility Initiative International Program Officeは、 米国National
   Science Foundation、 米国教育省のNational Institute on Disability and
   Rehabilitation Research、 欧州委員会のDG XIII Telematics Applications
   Programme for Disabled and Elderly、 カナダ政府、 IBM、 Lotus
   Development Corporation、 Microsoft Corporation、 およびNCRからの資金援
   助を受けています。 Web Accessibility Initiativeに関する詳しい情報は、
   <http://www.w3.org/WAI>をご覧ください。

 World Wide Web Consortium (W3C) について

   World Wide Web Consortium (W3C) は、 Webの発展と相互運用性を確保するた
   めの共通のプロトコルを開発することにより、 Webがその最大限の可能性を発
   揮できるよう導くために設立されました。 W3Cはアメリカ合衆国にあるマサチ
   ューセッツ工科大学計算機科学研究所 (MIT/LCS)、 フランスの国立情報処理自
   動化研究所 (INRIA)、 及び日本の慶應義塾大学がホスト機関として共同運営に
   あたっている国際的な産業コンソーシアムです。 コンソーシアムにより提供さ
   れるサービスとしては、 開発者および利用者のためのWorld Wide Webに関する
   豊富な情報、 作成された規格を具体化し奨励する標準的コードの実装、 新技
   術を応用したさまざまなプロトタイプやサンプルアプリケーションの開発など
   があります。 現在までに、320を超える組織がコンソーシアムの会員として参
   加しています。