WCAG20研究会の私的メモ



渡辺です.

1ヵ月半前からいろいろ準備してきた「WCAG 2.0 ラストコール・ワーキング
ドラフト研究会」が無事修了しました.雨の中,東女までおいでくださった
熱心な参加者の方々に感謝します.

WCAG 2.0は やはり,「ベースライン」がアキレス腱になりかねないので,
どうやって弱点を補って,うまい方向にWCAG 2.0を運用できるようにするかが
大事だと思いました.

また,コンテンツのガイドラインだけに頼っていては駄目で,ガイドラインの
認証やポリシーへの適用などのガイドラインを利用する仕組みの重要性や,
User Agentなどの,ウェブアクセシビリティを構成するほかの重要な要素にも
注目することが大事だと思いました.

この研究会を踏まえて,パブリックコメントを出すステップに進みます.
JIS WG2からも出しますが,皆さまからも,
・WCAG 2.0の良い点を支持する.
・日本から提案した項目を支持する.
・改善案を述べる.
などのパブリックコメントを出していただければと思います.


昨日の研究会の記録は後日ウェブサイトで公開しますが,
パブコメ作成に当たって,手がかりが必要だと思うので,
自分用に取ったメモを下記に添付します.
実際の質問と応答以外に,発言しなかった私の考えも書いてあるので,
記録ではありませんが,参考になれば幸いです.
# 発言者名は消してあります.

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☆質問
・WCAGにはレイアウトテーブルとかフレームとかについて使わないとかどうとか書いていない.

 JISからもパブコメで確認したことがある
 JISは「望ましい」と書いている.WCAGは達成基準を満たしていればよいと考えている.
 WCAGは,間違ったレイアウトテーブルの使用は駄目だと書いてある.
 JIS策定時,レイアウトテーブルが構造を表現している間違いがあるので,そこを防ぐためにJISでは使わないことが望ましいと書いた.WCAGは,ほかの達成基準で構造と表現の分離が書いてあるので,そこをあわせて読むと,JISの目的と同じ.

・G 2.1 キーボードでアクセス可能
 UAとの関わりなしで評価できないのでは? UA依存性がある.
 例:95REaderだと操作不能だけどJAWSならできる場合があると思う
 例:Gmail.ブラウザを直に利用するときは使えるけど,支援技術が入ると操作できなくなる
 [未解決]
 
・作ったときの考え方は? ユーザのためのドキュメントに思えない.
 WCAGの「関連文書」に,想定するWCAGの利用者が書いてある.
 (ユーザも含むが開発者側が主)
 
・達成基準のレベル分けの基準は,ユーザ側からの判断か製作者側からの判断か?
 ユーザに与えるインパクト(criticality)を規準に分類した.
 
・数値が出ている達成基準の根拠が明確でない.

 これについては,JISからも根拠が明確でないとのパブコメを出した.
 timeoutの数字:いい加減?
 contrast比:常に正しい値は存在しない.利用者や利用状況に依存するはず.でも,betterな数字がガイドラインに書いてあれば,それに準拠することで,かなり改善される.そういう意味で,数字が書いてあることが大事.

 
 
・5.1.a)にはValidityを求める要件があるが,WCAG G4.1はValidityを求めていない.

 4.1.1はあいまいなく構文解析できることを求めている.
 また,UnderstandingにはValidにすることも書いてある.
  
・UAに依存したタグを使ってよいのか?

  使ってよいとは言っていないと思う.
  ☆Validを求めない理由を改めてパブコメで確認する.
  
・ではWCAGはどのようにtestableか.

 
・適合条件の「集合したコンテンツ」
・自分が作っていないものに対しても責任を持つのか

 "aggregated content"の文章がわかりにくいことをパブコメで指摘する.
 Web unitとauthored unitの差が不明確であることをパブコメで指摘する.
 
・baselineの適合宣言がmachine understanbleではない.
  パブコメで提案してもよいと思う.
  
・適合宣言の範囲:正規表現
 ?


☆ベースライン
XHTMLはベースラインに含まれる.しかし,XHTMLのいくつかの要素(例:h1,
th)をUAが利用できない場合はどうなるのか? ベースラインという概念を持
ち込むと,必然的にUAがベースライン技術にどのように対応しているかの客観
的な調査が必要になる.また,一部に対応し一部に対応していない状況にどう
対応できるのかが明確でない.

ベースラインという概念自体はよい.このことはパブコメで支持すべき.

ベースライン技術のモジュール化という考え方が必要.

利用者のPC利用に詳しい団体に,その利用者層で適切なベースラインを提案し
てもらうことが必要.

ベースラインを設定すると誰が得するのか?

  ベースライン技術を,利用者にも周知公開することが必要.なぜなら,ベースラインを使えない利用者は除外されてしまう.

ベースラインは508条対策か?

 そうではない.しかし,テスタビリティがないと508条では使えない.
 
ベースラインの上げ下げを自由にできる危険性がある.JavaScriptをベースラ
イン入れると,JavaScriptを使える利用者は便利.使えない利用者は除外され
る.ここが危険!
  

・日本でベースラインを適切に設定できるか
・日本ではサイトの運営者毎に作るのか?
・JIS WGがベースラインを策定すべきではないか.
・ベースラインがアクセシブルな技術だけでできていることを誰が保証するのか?


Sufficient Techの例:
 SC2.1.1 の場合
  JavaScriptの例が挙げられているが中身はまだ準備中
 個別のTechniqueごとにUAのサポート状況が書かれる予定だが,国ごとにUAの技術レベルは異なる
 これがもたらす危険性をパブコメで指摘すべし
 
 Understandingの例や技術例を完全に把握していないと達成基準を満たしているかどうか判断できないのでは

UAごとの機能差が大きい.ベースラインという概念は,UAの機能向上にも対応
できるようになっている点で優れている.

ベースラインの良さもパブコメすべき.でないと,ベースラインが却下されて
しまう.よい点は正しくほめて,改良点を述べるのがよい.

Baselineの中にUAを含めるという話はなかった.

Contentだけではなく,UAも重要.UAが基本的な機能をもつべき.

Baselineの技術レベルの話ではなくて,UAの機能レベルで考えることもできるのではないか.

WCAGの適合宣言にbaselineの設定が必要.but 適合のHeuristic判断が難しい
のでは?
 testabilityがあるので適合チェックはしやすいはず
 しかし,baselineが持ち込むあいまいさがWCAGに穴を開けるかも.
 ベースラインのシナリオの事例2はよくない例だということをパブコメしてもよいのでは.
 
非テキストコンテンツに対してどうすべきかを細かく書いてある.
JISは画像,音,などのパート別に書いてある.WCAGは読んだだけではわかりにくい.
WCVGはinformativeな文書で達成基準の抽象さを補う.実践的な情報を付属文書で提供する必要があると思う.

W3C/WAIは,WCAG,UAAG,ATAGと総合的に考えている.JISはコンテンツだけ.
そこでずれが生じないか

ナビゲーションスキップや発音付加や日付型などの機能がXHTMLに必要ではな
いか.
 W3Cの該当WGに提案すべき
 
コンテンツ以外のUAなどに尻拭いをさせているのではないか

Protocols and Formatting WGがすでにあり,W3Cの仕様をチェックする仕組み
はある.そこに現場の声を届ける必要がある.

ユーザギャップを把握しておかないと,テストツールだけでは不十分
 ユーザテストをして,コンテンツが本当にアクセシブルかどうかわからないはず.
 WCAG WGはアクセシブルな*コンテンツ*を作るところにフォーカスしている.
 
JISの6章に相当する部分をWCAGはどうカバーするのか?
  Outreach and Education WGでカバーしているのではないか.
  
4.2.6にSWINGの記述があったのに消えた理由が知りたい

輝度コントラストの計算式

5.6b)文字サイズに対応するものがUnderstandingにしかない.これでよいのか

ベースライン関連 4.2.2
 4.2.2.は最後の砦


以下の技術をBaselineに入れることができるか?
JavaScript
Java (applet, application)
Flash
PDF

☆日本語関連

☆JISとの比較



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WATANABE Takayuki <nabe@xxxxxxxxxxxxxx>
東京女子大学現代文化学部コミュニケーション学科