ホームページを「聞く」
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- Subject: ホームページを「聞く」
- From: Masafumi NAKANE <max@xxxxxxxxxx>
- Date: Fri, 11 Jan 2002 06:32:16 -0600
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中根です。
Internet Watch にちょっと興味深い記事を見つけました。
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■富士通研究所、ホームページの“再生機”を開発
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2002/0110/fujistu.htm
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詳細は上記をご覧いただくといいと思いますが、ホームページをラジオのよう
な感覚で「聞く」というのが基本コンセプトのようです。それで、ここで興味
深いのは、当初は既存の Webページを「聞く」ことを目的にしていたのに対し
て、今はこのディバイスを意識したシンプルな作りのページを聞くことを中心
に考えている、という点です。実は最初にこの研究が Internet Watch で紹介
されていたのを読んだのをなんとなく覚えているのですが、そのときは、アイ
ディアとしては面白いし有効だと思ったものの、既存のページをなんとかし
ようというところに無理を感じてそれほど興味をひかれませんでした。
ブロードバンドの普及で、従来テレビやラジオでしか取得できなかったような
コンテンツがインターネット端末を通して取得できるようになってきていま
す。しかし、その一方で、これらのコンテンツにアクセスするために必要な操
作は、テレビのチャンネルやラジオの選局ボタン (ダイアル) を操作するのに
比べてはるかにめんどうです。その部分をクリアしないと、今のテレビやラジ
オのようなメディア (機会に弱い人でもそんなに苦労しなくても情報にたどり
着ける) にはなりえないと思うので、ここで紹介されているようなアプローチ
は今後非常に重要になってくると思います。
それで、考えなければならないことは、先日の携帯電話からの Webアクセスと
同じ問題ですが、こういう (少なくとも今は) 非一般的な端末ユーザに対する
情報提供を、一般的端末ユーザに対するものと同等なものにするための方法の
確立というところだと思います。前にも似たようなことを書いたと思います
が、端末側システム (端末機器の機能、ユーザの身体的能力、端末がおかれて
いる環境などをひっくるめて「システム」と言っています) がおかれている状
況に適した形で、受け取った情報を加工して、提示できるのが理想的な形だと
思います。すなわち、提供されているコンテンツに、そのような処理に必要な
全ての情報が含まれていることが必要になります。しかし、今多く見られるア
プローチは、サーバ側で想定される端末側システムに応じて、同じコンテンツ
に複数バージョンを用意するというものです。この場合、やり取りされるデー
タ量が少なくてすむという利点はありますが、端末側システムは、サーバ側で
想定されているいくつかのパターンのうちの一つに合致しなければなりませ
ん。また、サーバ側に端末側のおかれている状況を教えなければなりません。
これはマーケティングなどの観点からはうれしいことなのかもしれませんが、
プライバシー保護の観点から私は個人的には好きではありません。 (以前少し
書きましたが、私が proxy server を使ったアプローチを嫌う理由の一つでも
あります。)
もう一つ考えるべき点は、「聞く」ことを意識して作られた情報を表現するの
に、既存の HTMLなどの仕組みで十分な表現力があるのかという点だと思いま
す。 VoiceXMLなども、そういう問題意識があって開発されているのではない
かという気がします。
さらに、もう一つ考えておきたいのは、「聞く」ことを意識して作られたペー
ジを「見る」場合、聞いたときと同様に情報が伝わるかどうかという点です。
これは言うまでもなく再生機能のない端末のユーザや、聴覚障害を持つユー
ザ、あるいはとても音声情報を使えないような環境 (たとえば騒音が多い公共
スペースや、音を出すことがはばかられる図書館や会議中(笑)なと) にある場
合などのことを意識してのことですが、もしこの記事で紹介されているような
端末が普及した場合、このような「聞く」ことだけを意識して作られるページ
(一般端末用のバージョンがないようなページ) も出てくるでしょう。そのと
きに、「聞かない」人にも同じ情報が伝わることを保証しなければなりませ
ん。これは、現在ラジオと紙メディア (というよりは文字メディアですね) で
同じ情報をどう伝えているか、というようなことを検証することで、少し見え
てくるように思います。
以上、なんだかだらだらと書いてしまいましたが、こういうことはこれからま
すます重要になってくるのではないかという気がします。
中根雅文